キーワードは心とカラダに心地良く、地球に優しく。フード&ウェルネスはどこへ向かうのか?

激動の時代で人々は自然の中での癒しを求めています。

まだまだ先の見えない不確かな状況が続く時代、人々は精神的にも肉体的にも安息を求めています。今回のAYDEAブログではフード&ウェルスがこれから向かう先についてご紹介します。フード&ウェルネスのトレンドは時代を映す鏡。変化の多い私たちの生活は今後どこへ向かっていくのでしょうか?Text by Reiko Suga

サステナビリティと食の蜜月関係

パンデミックによって目覚めた環境破壊への危機感や環境問題への意識は、2021年の食のキーワードを表す上で非常に深く関係しており、切っても切り離せないものです。プラントベースの食事法や食品がスポットライトを浴びたのは昨年のこと。これらを選ぶ消費者たちは環境問題への意識が非常に高く、環境負荷の少ないプラントベースをチョイスしています。こうした環境問題を考えて食のセレクトをする、という購買傾向が2021年はさらに加速していきます。

前述したようにミートレスな食事、食品の需要はますます拡大をしていくでしょう。ドレッシングや調理などに使用するオイルもパンプキンシードやウォールナッツのものが増えています。健康を意識し、そして地球にも優しい食品がさらに市場に出回っていくことは明確です。

環境問題、健康志向も合間って2021年はミートレスもさらに加速していく予感。

・人生を豊かにする“マインドフル・イーティング”

それぞれ起きていることや食べているという行為自体に集中をするマインドフル・イーティングを心がける人も増えるでしょう。雑音の多い時代、携帯電話やTVを見ながらの食事、ストレスによる暴飲暴食など、現代人は正しい形で食事と向き合っているとは言えないよう。質のいい新鮮なものを適量食べ、素材自体を味わうことで徐々にクリアなマインドを手に入れられる。健康的な食生活を送るということが心身のバランスを保ちます。

・“アップサイクル食品”で無駄を出さずに食す

環境問題の観点からファッション業界ではリサイクルの需要が増加していますが、フード業界も同じ波が押し寄せています。アップサイクル食品とは形や大きさで規格外と判断された野菜や果物をお菓子として加工したもので、ホールフーズマーケットによる2021年のフードトレンドとしても紹介されています。また、昨年コロラド州のデンバーで「アップサイクル食品協会」が設立され、アップサイクル食品を「本来は人間の食用にされなかった原材料を用い、検証可能なサプライチェーンで調達・生産され、環境に良い影響をもたらす食品」と定義しました。スナックなどに加工された食品は通常品となんら変わらないクオリティ。フードロスを減らす対策としても注目されています。

コールドプレスジュースの果物カスや形が不揃いで店頭に並ばない商品がアップサイクル食品としてアップデートされています。Photo by Whole Foods Market

・生産者応援キャンペーンとして食品を選ぶ

最近では物を買う際に消費者が生産者の政治的な立場や人種差別問題、従業員に対する労働環境への対応などを厳しくチェックしています。そこに共感できない場合は商品の購入へと繋がらない時代。食品においてもブラックオーナーや女性が手がけるブランドのメッセージに共感し、ブランドをサポートする人も増えて行くでしょう。

Black Owned のワイン「THE GUILTY GRAPE」。Photo by Guilty Grape

不確かな時代だからこそ、すべてに思いやりの心を持って

美味しいものを食べて健康を維持する。深い繋がりのあるフードとウェルネスの関係は常にシンクロし、いつの時代も同じ方向を見据えています。パンデミックの到来でフードとウェルネスが向かう方向は確実に大きく方向転換を余儀なくされました。テープを早送りをしたように、私たちが課題としていたことがトレンドとして何年も早く到来した、と言ったほうがいいかもしれません。

大きな不協和音が起こった昨年、多くの人が不安に苛まれ、ウェルネスに傾倒し、心とカラダのバランスを取ることに時間を費やしました。コロナ禍で多くの人がメディテーションを日常生活に取り入れ、メディテーションアプリは急成長。アメリカで人気の「Calm」も昨年末日本に上陸しています。とにかく今の時代、気持ちが安らぐ、心とカラダが心地いと感じるものやことを取り入れるよう、皆が意識を向けています。

・セルフケアからコミュニティケアへ

新型コロナウイルスの蔓延で露呈したのは貧富の差や人種差別などの体系的な不平等です。今まで「私にとっていいもの、心地いいもの」を求めていたのが、「すべての人にとっていいもの、心地いいもの」に変化しています。人助けをする、より良い社会を目指すことに人々の幸せの尺度が向いています。

・気持ちを安らげるためのドラッグ

ビューティー製品やサプリメントなど、安らかな睡眠や筋肉疲労の緩和など、CBDのプロダクトは広く市場に浸透してきました。2021年からは新たにアリゾナ州、モンタナ州、ミズーリ州、ニュージャージー州、サウスダコタ州でもマリファナが合法となり、医療用の目的での導入も含め、全米37州でマリファナが合法化されています。オレゴン州ではマジックマッシュルームの使用が合法化されるなど、ドラッグが医療目的として注目されていることを意味しています。ニュージャージー州では合法のマリファナによって数億ドルの税収が見込まれており、今後ニューヨーク州での合法化に注目が集まっていいます。

飲酒や喫煙をするよりもカラダに負担がかからないと思っている人も多く、お酒は飲まないけれどマリファナは吸う、という人々のことをカリフォルニアでは“Cali Sober”と言うそう。ドラッグというと危険なイメージがつきまといますが、合法化されたものを適度に摂取することは心身を健やかな状態に保つ手助けになると言われています。

・旅の目的はリトリートを求めて

まだまだ旅の制限が多いwithコロナの生活ですが、パンデミック前に比べ、確実に旅のトレンドは変化しています。大都市でのショッピングや美食巡りの旅から、癒しを求め、自分の中の確固たる安定を見つけるためのリトリート・トリップの需要が右肩上がりです。そこでは健康的な食事にヨガ、セラピストやライフコーチからの指導を受けられます。ラスベガスのスパリゾート「キャニオン・ランチ」やタイの「チバソム」など、ウェルネスプログラムに力を入れた施設への宿泊の需要が伸びています。

プロによるさまざまなリトリートプログラムが組まれているキャニオン・ランチは全米4箇所で展開している。写真はCanyon Ranch Lenox。Photo by Canyon Ranch

・オンラインウェルネスとデジタルデトックス

未だ続くステイホームで自宅でできるフィットネスグッズの需要が拡大中。テクノロジーを駆使したウェルネスグッズが次々と登場しています。リサーチ会社、NPDによると、昨年3月〜10月にかけてフィットネス機器の売り上げは2倍以上となり、23億円に達しました。トレッドミルやエアロバイクの売り上げも急増し、在庫が枯渇している状態です。昨年7月にカナダのスポーツウェアブランド「ルルレモン」がフィットネススタートアップの米ミラーを買収した事も話題になりました。

自宅にいながらジムのコーチの指導が受けられるバーチャルフィットネスのミラーもコロナ禍で躍進を見せている。Photo by Mirror

その反面、デジタルデトックスをして自然と触れ合うことで心身ともに健康的でいたいと願う人々も多く存在します。日常のソーシャルメディアやニュースで情報過多となり、それに疲れた人も多いことは確か。そうした人たちは自然の中でウォーキングやランニングをしたり、瞑想をして五感を研ぎ澄ませることに時間を費やし、自然回帰を行なっています。

こうしてみると、パンデミックによって私たちを取り巻くすべて事象が人間のあるべき姿や環境問題の本質を見つめ直す方向へと多くの人が舵をきっているようです。